令和元年7月9日
論点整理「『OECD』の調査結果から見えるもの」
■国際教員指導環境調査結果
本年六月十九日、経済協力開発機構(OECD)は加盟国など世界四十八カ国・地域の中学校の教師を対象に、勤務環境などを調べた国際教員指導環境調査(TALIS)の結果を発表した。日本の教員の業務時間の合計は週五十六時間と参加国の中で最も長く、五年前の前回調査と比べても二時間長くなった。部活動などの「課外活動の指導」で週休日もなかなか休めない現状もあり、参加国平均の三十八時間を大幅に上回る結果となった。
■TALISから見えるもの
この調査は五年ごとにOECD加盟国等で行われ、日本では平成三十年二~三月にかけて、全国一九六校の校長と教員三六〇五人がアンケートに回答した。業務時間の内訳のうち、参加国中最長だった項目が次の四つである。
①仕事時間の合計
②課外活動の指導
③一般的な事務業務
④授業計画時間
また、日本では教師が職能開発活動(つまり研修等)に費やした時間は参加国に中で最短である一方、職能開発のニーズは参加国平均に比べて高い傾向にある。煩雑な業務が教師の職能開発の妨げになっていることが分かる。
さらに、「指導実践」の項目において、参加国平均と比べて、日本の中学校に顕著に低い項目が、次の三つである。
①批判的に考える必要がある課題を与える
②明らかな解決法が存在しない課題を提示する
③生徒が課題や学級の活動にICTを用いる
この調査結果から、日本の中学校教師は、授業準備に加え、課外活動や事務業務にも時間をかけていることが分かる。業務時間の合計は必然的に長くなる。しかし、三十人以上のクラスを一人で担当し、指導案に沿った予定調和の授業展開を目指す傾向にある日本の授業では、生徒間の意見交換の方向性が見通せなかったり、答えが一つにならない課題を投げかけることは難しいと感じられるであろう。また、教師自らがICT機器を活用する頻度は高まってきたが、生徒が授業で積極的に活用できるまでに十分な環境整備はなされていない。AIの発展等、予測困難なこれからの時代には、勇気を持って、このような課題にも日本の子供たちに挑戦させる必要があろう。
■平均的な学校の環境
今回の調査では、中学校一校当たりの生徒数は参加国平均が五四六人に対し、日本は三五七人で、日本の中学校は規模としては比較的小さいことが分かる。一方で一学級当たりの生徒数は、参加国平均が二十四人対し、日本は三十一人と、クラスサイズは大きくなる。このような点も日本の中学校教師の仕事時間を長くする要因の一つであろう。
■今後の取組の方向性
文部科学省は、今回明らかになった課題を踏まえ、次の四つの取り組むべき方向性を示した。
①養成・採用・研修の抜本的改善による教員の資質向上
②学習指導要領が目指す教育の推進
③ICTを活用した教育の強力な推進
④教職員等指導体制の充実が必要
確かに教師の最も重視すべき業務は「教育」、子供たちを教え育むことである。特に専門教科に関する指導は疎かにできない。しかし専門教科に関する知識や教授法だけでは十分ではない。特に「主体的な学び」を導くためには、子供たちとの信頼関係が重要となる。その信頼関係を構築するためには、授業以外での関わりもポイントとなる。今回の調査で確認できた日本の教師の長所をさらに伸ばし、今後の取組を成功させるためには、「チーム学校」がキーワードとなる。学級経営、教科指導等、一人で丸抱えせず、協働性を高め、情報、ノウハウを共有し、協力して業務を進める。必要があれば、保護者や地域にも連携を求める。このようなことが、「学校における働き方改革」の実現に繋がるはずである。「子供たちと向き合う時間を大切にしたい」と教師は願っている。児童・生徒と教師の双方にプラスとなる改革を推進するためにも、学校・家庭・地域の「協働による教育」が、今後いっそう大切になるものと考える。
本年六月十九日、経済協力開発機構(OECD)は加盟国など世界四十八カ国・地域の中学校の教師を対象に、勤務環境などを調べた国際教員指導環境調査(TALIS)の結果を発表した。日本の教員の業務時間の合計は週五十六時間と参加国の中で最も長く、五年前の前回調査と比べても二時間長くなった。部活動などの「課外活動の指導」で週休日もなかなか休めない現状もあり、参加国平均の三十八時間を大幅に上回る結果となった。
■TALISから見えるもの
この調査は五年ごとにOECD加盟国等で行われ、日本では平成三十年二~三月にかけて、全国一九六校の校長と教員三六〇五人がアンケートに回答した。業務時間の内訳のうち、参加国中最長だった項目が次の四つである。
①仕事時間の合計
②課外活動の指導
③一般的な事務業務
④授業計画時間
また、日本では教師が職能開発活動(つまり研修等)に費やした時間は参加国に中で最短である一方、職能開発のニーズは参加国平均に比べて高い傾向にある。煩雑な業務が教師の職能開発の妨げになっていることが分かる。
さらに、「指導実践」の項目において、参加国平均と比べて、日本の中学校に顕著に低い項目が、次の三つである。
①批判的に考える必要がある課題を与える
②明らかな解決法が存在しない課題を提示する
③生徒が課題や学級の活動にICTを用いる
この調査結果から、日本の中学校教師は、授業準備に加え、課外活動や事務業務にも時間をかけていることが分かる。業務時間の合計は必然的に長くなる。しかし、三十人以上のクラスを一人で担当し、指導案に沿った予定調和の授業展開を目指す傾向にある日本の授業では、生徒間の意見交換の方向性が見通せなかったり、答えが一つにならない課題を投げかけることは難しいと感じられるであろう。また、教師自らがICT機器を活用する頻度は高まってきたが、生徒が授業で積極的に活用できるまでに十分な環境整備はなされていない。AIの発展等、予測困難なこれからの時代には、勇気を持って、このような課題にも日本の子供たちに挑戦させる必要があろう。
■平均的な学校の環境
今回の調査では、中学校一校当たりの生徒数は参加国平均が五四六人に対し、日本は三五七人で、日本の中学校は規模としては比較的小さいことが分かる。一方で一学級当たりの生徒数は、参加国平均が二十四人対し、日本は三十一人と、クラスサイズは大きくなる。このような点も日本の中学校教師の仕事時間を長くする要因の一つであろう。
■今後の取組の方向性
文部科学省は、今回明らかになった課題を踏まえ、次の四つの取り組むべき方向性を示した。
①養成・採用・研修の抜本的改善による教員の資質向上
②学習指導要領が目指す教育の推進
③ICTを活用した教育の強力な推進
④教職員等指導体制の充実が必要
確かに教師の最も重視すべき業務は「教育」、子供たちを教え育むことである。特に専門教科に関する指導は疎かにできない。しかし専門教科に関する知識や教授法だけでは十分ではない。特に「主体的な学び」を導くためには、子供たちとの信頼関係が重要となる。その信頼関係を構築するためには、授業以外での関わりもポイントとなる。今回の調査で確認できた日本の教師の長所をさらに伸ばし、今後の取組を成功させるためには、「チーム学校」がキーワードとなる。学級経営、教科指導等、一人で丸抱えせず、協働性を高め、情報、ノウハウを共有し、協力して業務を進める。必要があれば、保護者や地域にも連携を求める。このようなことが、「学校における働き方改革」の実現に繋がるはずである。「子供たちと向き合う時間を大切にしたい」と教師は願っている。児童・生徒と教師の双方にプラスとなる改革を推進するためにも、学校・家庭・地域の「協働による教育」が、今後いっそう大切になるものと考える。
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