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私たちの主張

Opinion

平成29年3月14日

超過勤務縮減は意識と業務の双方で改革を



精神論では乗り切れない


 学校の多忙化が進む中でも大多数の教師はやりがいを感じながら職務に励んでおり、本連盟が平成28年に実施した勤務実態調査によれば、時間外勤務が長時間の者ほど、やりがいを感じている割合は高くなっている。教師は生徒のためにどこまでも頑張ろうとするが、その一方で、近年の多忙化は「もはや精神論だけでは乗り切れない」との意見も出てきている。そこで、ここでは本連盟の勤務実態調査の自由記述回答から学校現場の負担の状況や教師の意識を確認し、望ましい超過勤務縮減のあり方について考えたい。

負担や多忙化の原因


 業務の負担の原因は、やはり部活動指導を挙げる者が多い。部活動の教育的効果を認めつつも、負担を感じている者は少なくない。しかし、当然ながら、逆に部活動指導が教師のやりがいであるという意見もある。
負担の原因として、一部の者への仕事の偏在を挙げる者も多い。マネジメント上、ある程度の役割の多寡はやむを得ないとは思うが、これが原因で職員間のチームワークが崩れることがあっては、組織力の低下につながるであろう。
 近年の多忙化の原因としては、新たな行事や取り組みの増加を挙げる職員が多い。この背景には、生徒募集という学校に課せられた課題があり、多くの県立学校において、特色ある行事の企画や広報活動に必死である。学校の特色化とその広報はもちろん必要であるが、これが教師にとって大きな負担となっている面も見逃せない。
 少子化に伴う学校規模の縮小も多忙化の大きな要因となっている。確かに学級数が減れば学級担任数も少なくてすむが、学校全体で校務分掌の仕事量は、ほとんど変わらない。学級数がかつての半数となった学校も多く、これらの学校は教員定数が大幅に減った状態で変わらぬ業務をこなさなければならない。
 その他にも多様な生徒や保護者への対応、アンケート調査や報告書の作成など、多忙化の要因は多岐にわたる。

超過勤務縮減に向けて


 次に、県立学校が1ヶ月に2回程度設定している定時退校日について、本連盟の調査結果から見えてくる実態を述べる。連盟員の意見は、「部活動指導や業務の多さにより定時退校は無理である」との諦めが大多数である。ただ、その中には、掛け声だけでなく半ば強制的に定時退校を徹底するよう、県の指導や管理職のリーダーシップを望む意見も多かった。つまり、定時退校日に対して諦めと僅かな期待が入り交じっている感情である。また、「なるべく早く帰ろうと意識はしているが、生徒のために手を抜けない」という、制度の主旨は分かるが定時退校はできないという意見や「生徒のためにやっているので早く帰る必要はない」、「教育現場には馴染まない」という、制度自体に否定的な意見も多い。一方で、割合は僅かではあるが、「定時退校日は早く帰るようにしている」、「管理職の声掛けで、職場が帰りやすい雰囲気になった」という意見も見られた。
 全体的に、定時退校日の目立った効果は少ないものの、一部の学校では職員の意識や職場の雰囲気に変化が出始めている。また、この制度に感謝している者や期待している者もいることを踏まえ、定時が無理でも、月に数日は早く退校しようと努力することは全職員に必要であり、管理職のリーダーシップと職場の共通理解のもと、一層推進していくことが望まれる。
ただし、そのためには業務も縮小することが大前提である。業務や負担は増え続けているのに定時退校を促すことは納得性に欠け、逆に職員のストレスとなる。超過勤務縮減において、行事・業務のスクラップアンドビルドは必須の条件である。

教師間の連携も不可欠


 今回の調査において、多忙化の原因や超過勤務縮減の方策として「教師間の連携」をキーワードとして挙げた回答が複数見られた。現状では、忙しさの余り、コミュニケーションをとること自体が億劫になり、一人で仕事を抱えるケースも多い。しかし、教師間で連携ができていれば仕事の割り振りや協力体制など、スムーズに進み、超過勤務縮減につながる。仕事の偏在に対する不満も、管理職や同僚からの労いや感謝の言葉で負担感は違ってくるであろう。
 教師が今後もやりがいを持って職務に励むために、学校現場での超過勤務縮減の方策は、教師間の連携と管理職による適切な業務マネジメントを基盤とした、意識改革と物理的な改革の両輪が揃わなければならない。



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