福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成25年10月1日

「教育の再生」に不可欠な気概ある教師の育成

論じるべき教師の「気概」

現代の教育に対する危機感から、国レベルでは数々の制度改革案が提示されている。いじめ対策の法制化と基本方針の提示、教育委員会制度の改革案、入試制度改革案等、いずれも喫緊の教育課題の解決をねらい、国を担う人材育成はいかにあるべきかという根本から議論が行われているわけだが、直接の担い手となる現場教師のやる気や熱意を引き出し、毎日の実践の向上に活かすことがなければ改革は教育をよりよいものとすることにつながらない。学校現場では日々直面する課題に必死になって取り組んだり、児童生徒が我が子であったらという思いでいかに子供を導くべきかと悩みながら実践を行っているわけだが、今求められることは教師が「地の底から湧き上がるエネルギー」を持ち続けて教壇に立つことであり、そういった「気概」を持つことを可能とするためには何が必要かという視点から諸課題の解決策を論じていくべきである。

「あるべき教師像」に「和魂」を据えよ

大量退職、大量採用の時代を迎えつつある中、優れた教師をを育成することが最重要課題である。制度面では、総合的な教師力向上のための養成・採用・研修の在り方が議論されているところだが、先に述べた「地の底から湧き上がるエネルギー」を備えた教師としての志をいかに育てるかという視点が不可欠となる。このエネルギーは、教職を単に自己実現のための一方策ととらえるだけでは生まれない。自分が育った日本、郷土、先人たちについて学び、限りない愛着と報恩感謝の念を抱くこと、そして教職という仕事が伝統や文化を伝えていく崇高な役割であると自覚することが、困難な仕事に挑戦していくためのエネルギーの源泉となるのである。「世界トップレベルの学力と規範意識を備え、歴史と文化を尊ぶ心を持つ子供たちを育成すること」や「日本人としての誇りと自信を持ち、世界のリーダーとなる日本人を育成すること」といったことが国家的教育目標であるならば、なおさら教壇に立つ教師にはその拠り所となる精神、つまり「和魂」が必要なのである。教師も例外なく戦後教育を受けてきているわけであり、国旗・国歌さえまともに尊重できない勢力もいまだある中、教員養成にあたっては「和魂」を中心に据え、その上に高度な専門性やグローバル人材育成のための素養とスキルが養成されるべきである。

学び合う学校の組織文化の醸成

現在、学校では教職員の年齢構成が歪であり、これから若手は増える見込みではあるが高齢層が厚く、その中継ぎ的なミドル層が薄い状況にある。ベテランの経験というものはやはり貴重なものであり、教育実践のノウハウや技術の継承ということが大きな課題となっている。初任者研修制度や、様々な研修の充実が求められ、インターン制度なども検討されているところだが、やはり学校現場での実践を踏まえた育成が中心となる。「ゆとり世代」と称される若者の気質を踏まえた対応も必要だ。(株)らしさラボ代表取締役の伊庭正康氏によれば、若者の特徴のプラス面として、「誰かのために役に立ちたい」という志向、「お手本」を探す、または自分が「お手本」となりたいという志向が強く、マイナス面としてうまくいかないときにリセットボタンを押してしまおうとする「リセット」志向や「成功が見えなければやりたくない」という「リスクヘッジ」志向などを挙げている(週刊教育資料2013年4月8日号)。彼らの強みを活かして、実践を踏まえた納得感を与えながら「きっかけ」をうまく作って指導していきたいものである。また、生徒のネットに関するトラブルやLINE の問題等、ベテランにはお手上げの課題もあるが、若手教員は世代的に近い生徒の問題について、より効果的な解決策を思いつくかもしれない。日々直面する課題に対しては、チームとして若者の強みも活かして学び合いを基本としながら解決に向かう組織作りも重要ではないか。経験を共有し、達成感を得ながら教師としての「気概」を養成したいところである。

社会への影響力を強化しよう

教員の不祥事が起こると、マスコミ等で大々的に報じられ、教育界への不信感が世を覆っている。これは教職という仕事の社会的影響力を物語るものであり、使命の大きさを私達は常に自覚せねばならない。しかしながら、大多数は真摯に教育活動に携わっており、今後の成否は、地域や保護者からの応援を得ながらいかに学校の教育力を上げていくかにかかっている。実態を踏まえた学校目標、その目標を踏まえた教師一人ひとりの教育理念と教育方針を明確にし、発信し続けることが、ますます重要になってくると考える。
福岡教育連盟は「福岡教育連盟が考えるあるべき教師像」を軸に、各自が実践力向上のために自己研鑽に励むとともに、現場の声を集約して教育課題についての提言を発信していきたいと考えている。「学ぶことをやめた教師はもはや教えることはできない。」という言葉を今一度肝に銘じなければならない。