福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成30年7月3日

「教職員の働き方改革」

■教職員への負担が増大
 平成30年3月末、福岡県教育委員会より、「教職員の働き方改革取組指針」が公示された。教職員の長時間勤務の改善に向けて、時間と労力をかけて作成いただいたことに感謝申し上げたい。その冒頭で教育長が、「学校教育が大きく変わろうとしている中、今後、教職員は新たな授業改善などについても着実に実施していく必要があり、ますます教職員への負担が増大することが見込まれます。~中略~『教職員の働き方改革』を実現することが、教職員の自らの意欲と能力を最大限発揮し、健康でやりがいを持って働くこと、また、『教職員が子どもと向き合う時間』を十分に確保することにつながり、ひいては本県教育のさらなる改善・充実につながります。」と述べている。
 学習指導要領の改訂、高大接続改革など、教職員への負担は間違いなく増大するだろう。しかし今回の働き方改革で、どの程度の効果を導き出すことができるのか、その指針の目的やポイントを確認していきたい。
■働き方改革の目的
 本指針の目的として、次の2点が挙げられている。
① 教職員のワーク・ライフ・バランスの取れた生活を実現し、健康でやりがいを持って働くことができる環境を整備すること
② 「教職員が子どもと向き合う時間」を十分に確保し、学校教育の質を維持・向上させること
誰しもバランスの取れた生活を送りたいし、健康でもありたい。ただ、教師というものは、目の前の生徒たちが理解できる授業づくりのために工夫を重ね、部活動でも生徒たちの成長する姿を見るために指導する。授業も部活動も「生徒たちと向き合う大切な時間」である。この時間が確保されるのであれば、この働き方改革に教職員は積極的に取り組むであろう。
■働き方改革のポイント
さらに本指針では、3つのポイントが挙げられている。
○目標の明確化
  働き方改革を進めることは「子どもと向き合う時間を確保し、授業や指導の質を高め、ひいては学校教育全体の質を高めることにつながる」という意識を全教職員が持つこと。
○意識改革の重要性
  働き方改革を進めるために必要なことは、無制限・無定量の勤務を是としないこと、職員一人一人が組織の一員として効率的に業務を遂行する意識を持つこと、またタイムマネジメントの意識を持つことが重要。
○業務の見直し
  働き方改革を進めるには、現在、教職員が行っているあらゆる業務について、必要性、効率性の観点から、組織的かつ継続的に見直すことが必要。
■ポイントへの疑問点
 1つ目のポイントに対して、教職員の中には疑問に思う者もいるかもしれない。勤務時間の縮減と授業の質を高めることは、一体どのように両立するのだろうか。
 2つ目のポイントでは、確かにタイムマネジメントの視点も重要だが、我々教師が日々向き合っているのは、常に変化をし続ける子供たちであり、教師の仕事には予測不可能な展開も多い。定量の勤務を前提にするのは難しいのではないか。
 3つ目のポイントでは、短期的な「必要性」「効率性」にばかり気を取られると、子供たちの数十年後に生きる貴重な経験を奪う危険性もあるのではないか。
■教職員の「働き方」を考える
教職員の多くは、授業や部活動、学校行事を通して、子供たちと向き合う時間を欲している。そのための働き方改革であれば、誰もが積極的に取り組むはずである。
しかし例えば、就職・進学の面接試験等を翌日に控えた生徒を、定時退校日という理由で、我々は指導を打ち切ることができるだろうか。
 教職員の「働き方」を考える際には、単に超過勤務の量を減らす議論に終始するのではなく、「子供たちと向き合う時間」の確保を議論の基本に据えて、「働き方」の質を問い直すべきではないだろうか。
 我々は誰しも、健康でやりがいを持って働きたいと願っているのだから。

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