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私たちの主張

Opinion

平成29年11月9日

【教育テーマ論点整理】「特別支援学校新学習指導要領」~社会に開かれた教育課程で何が変わるのか~



 特別支援学校新学習指導要領(以下、新指導要領)が公示された。平成30年度(幼稚部)から34年度(高等部)の計画で実施される。各学校では新指導要領の趣旨を踏まえた教育課程の編成作業が進められる。

今回改訂で目指す教育課程の方向性

 今回の改訂では、我が国の学校教育が長年目指している「生きる力」の育成という目標を、教育課程の編成を通じて具体化し、その教育課程に基づく教育活動を通して、幼児児童生徒一人一人に、社会の変化に主体的に向き合い、自らの可能性を発揮し他者と協調しながら、よりよい社会と幸福な人生を切り拓き、未来の創り手として必要な力を育むことを最も重要な視点として掲げ、特別支援教育においても重視しており、教育課程や教育活動を改善・充実するために次の観点を挙げている。

社会に開かれた教育課程

・「何ができるようになるか」(育成を目指す資質・能力)
・「何を学ぶか」(教科等を学ぶ意義と教科間・学部間・学校段階間のつなが りを踏まえた教育課程の編成)
・「何が身についたか」(学習評価の充実)
・「幼児児童生徒一人一人の調和的な発達をどのように支援するのか」(調 和的な発達を支える指導)
・「実施するために何が必要か」(教育課程の実施に必要な方策)
 「社会に開かれた教育課程」というテーマが示されたが、特別支援学校では日頃から保護者との連携が不可欠であり、地域との連携や外部人材の活用、企業・産業現場等での実習など、社会とつながりを持って教育活動を展開している。特に、個別の教育支援計画等の策定や作成を通して外部と連携し、社会に開かれた学校として存在してきた経緯がある。一例として各学校で幼児児童生徒が具体的にどのような力を身に付けてきたかを明らかにし、それらの力が、家庭や社会での自立に向け効果的に発揮されるためにどのような支援が必要か等の情報発信のツールとして、個別の教育支援計画同様、教育課程を活用する取組も提案されている。

カリキュラム・マネジメント

 カリキュラム・マネジメントとは、学校教育目標設定、教育課程編成の基本方針や学校経営計画の作成など、目標や計画等の地域や家庭との共有、幼児児童生徒や卒業生及び地域等の実態把握の資料収集、学習指導計画や指導案等の作成、教育活動の改善に向けた学校運営、交流及び協同学習等、創意工夫に基づいた多様な取組を、学校教育の中核として教育課程を据え直し、組織的・計画的に質的向上を図るとされる。その上で「教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てる」、「教育課程の実施状況を評価してその改善を図る」、「教育課程の実施に必要な人的または物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して教育課程に基づき、組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図る」、「何が身についたのかという学習の成果を的確に捉え、個別の指導計画等の実施状況の評価と改善を、教育課程の評価と改善につなげていくよう工夫する」と定義している。

教育課程編成に向けての課題

 幼稚園、小学校、中学校及び高等学校に準ずる教育課程(以下、準ずる教育課程)では、幼稚部や小学部等早期での適切な教育を経て、小・中・高等学校等、教育の場を移行することが望ましいと判断される場合もある。通常の学級等で障害に応じた指導が適切に行われ、必要な支援が提供されるために、その鍵となる自立活動等を効果的に行い、各教科等で育まれる資質・能力を支えるよう教育課程を編成する。学習の場の移行に際して、移行期の教育の充実のために、移行支援計画とともに教育課程を活用して学びの連続性を保つ取組も求められるだろう。
 知的障害の教育課程では、自立活動や各教科等を合わせた指導(以下、合わせた指導)と、各教科の学習内容が混同されやすいという課題や知的障害が軽度である児童生徒の対応の課題等がある。知的障害教育の各教科についての理解を促し、各教科の指導の充実が求められる。自立活動や合わせた指導の学習内容については、各教科の内容も同時に整理し、横断的に指導計画等を評価し、改善に努める必要がある。上位の学部等との接続では高等部等卒業までに身に付けさせたい資質・能力を明確にした上で、一貫して育むことができるようなカリキュラム・マネジメントを進めることも必要であろう。
教育課程を学校教育や経営の中心に据えることにより、学校・保護者・地域との共通理解・連携がさらに深まり、特別支援教育が一層充実することを期待する。


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