平成27年6月21日
批判されない宮崎アニメ
子供に見せたくないアニメの筆頭に挙げられるのが『クレヨンしんちゃん』だ。親を呼び捨てにする、下品、猥褻…とまあいろいろ。原作はもともと『漫画アクション』という大人向け雑誌での連載で、アニメ化によって全国区になったためやり玉に挙げられた格好だ。原作者亡き後も未だに賛否両論である。
批判されない宮崎アニメ
では宮崎アニメはどうか。『ナウシカ』にしろ『千と千尋』にしろ批判の声を聞かない。否、そもそも批判の対象にならない。『もののけ姫』に残虐なシーンがあるとか、『風立ちぬ』で喫煙シーンが多過ぎるといったつぶやきは聞こえても、世の常識では礼賛だ。否、絶賛だ。
宮崎駿は左翼主義者である。「心情的左翼だった自分が、経済的繁栄と社会主義国の没落で自動的に転向し、続出する理想のない現実主義者の仲間にだけはなりたくありませんでした」(『時代の風音』)と自らの「転向」を語っているが、左翼体質は抜けていない。
アニメを観、見せるのは各自の自由にしても、以下の言動を踏まえ、薄甘い左翼主義者の作品を観、また見せているという自覚くらいは必要ではなかろうか。
左翼主義者・宮崎駿
「憲法を変えることについては、反対に決まっています。選挙をやれば得票率も投票率も低い、そういう政府がどさくさに紛れて、思いつきのような方法で憲法を変えようなんて、もってのほかです。」(『熱風』2013年7月)宮崎駿の政治発言は多い。スタジオジブリ発行の『熱風』には数多くの迷言が登場する。
「慰安婦の問題も、それぞれの民族の誇りの問題だから、きちんと謝罪してちゃんと賠償すべきです。」(同)朝日新聞が誤報を認める以前の発言だが、そもそものスタンスが左翼だ。
「領土問題は、半分に分けるか、あるいは『両方で管理しましょう』という提案をする。この問題はどんなに揉めても、国際司法裁判所に提訴しても収まるはずがありません。」(同)言ったのは鳩山由紀夫では無い。中露韓にエールを送らんばかりの脳天気発言の主は宮崎駿である。
「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたい」という横断幕がスタジオジブリの屋上に掲げられたのは2011年6月17日。東日本大震災三ヶ月後の意思表示である。今ここで原発の是非については問わないが、論調は明らかに左翼である。
労働組合書記長・宮崎駿
学習院大学政経学部卒。1963年、東映動画に入社、翌年労働組合の書記長となる。60年代の空気は若者の多くを左傾化したので宮崎一人を責めるわけにはいかない。ただ「理想のない現実主義者」を拒否した「心情的左翼」が、原始共産社会を理想とする夢想家として形作られていったことは、その後の彼の作品で想像できる。
作品が良ければ良いでは無いか、とも言える。確かに「血沸き肉躍る冒険、はらはらどきどきのストーリー展開。奇想天外な形状をした飛行機械と、辺りを一瞬にして火の海と化す破壊兵器。天高く駆け抜ける飛翔感と、それ以上に蠱惑的な墜落感。あるいは純朴な少年と高潔な少女の恋とも言えぬ淡い想い」(青井汎『宮崎アニメの暗号』)等々エンターテインメントとしての面白さは抜群だ。ところが観終わると「少なからぬ人々が『面白かったんだけど……』と、何かしらのわだかまりを『……』に忍ばせながら帰途に着く」(同)
カリオストロやラピュタ等エンターテイナーとしての面目躍如だった宮崎作品も、だんだん意味がわからなくなってきた。あの金魚は何だったのか。なぜ城が歩かなくてはならないのか。顔の無い化け物に追いかけられていたヒロインが、直後にその化け物と一緒に電車に乗っている。観客は「ファンタジーだから」と意味不明を無理に飲み込む。あるいは隠された暗号を読み解こうと躍起になる。
ハイジでもコナンでも面白いものは面白い。ただジブリの先輩・高畑勲が明確に共産党支持を打ち出しているのに対して、宮崎駿は今ひとつはっきりしない。そんな人物の作品が「単なるアニメじゃないか」と切って捨てられないほど巨大な影響力を持つに至った。
公開の度に観客動員数は増、興行収入もうなぎ登り。「悪口を言うなんてとんでもない!」―現役引退したとはいえ、世界的巨匠に対してもはや批判そのものを世間が許さない。今の日本で宮崎アニメの洗礼を受けていない人は先ずいない。家でも学校でも宮崎アニメは垂れ流し。ジブリグッズの氾濫を大人と子供とで競い合っている。そもそも生まれたと同時に宮崎アニメに取り囲まれて育っている。となりのトトロを子守歌で聞き、ポニョポニョつぶやきながら大きくなった。薄甘い左翼幻想が個人の生活圏の深層に喰い入り、日常の思考レベルの音階を形作ってきた経緯がある。
ご本人は「反原発」と息巻いているが、宮崎アニメによる洗脳は、揺籃期から至る所で繰り返された結果、放射能被害に負けず劣らず強烈だ。「除染」を唱えると、至る所から糾弾されそうな「閉ざされた言語空間」が今の日本にはある。
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