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私たちの主張

Opinion

平成30年8月30日

「特別支援学校に関わる人事異動の変更点について考える」

■人事異動における変更点
 平成二十九年度末の人事異動より、特別支援学校(以下、特支)へ異動する場合、特別支援学校教諭免許状(以下、特支免許)を有しないと異動できないように変更になった。これは、文部科学省が、特支に勤務する教員の特支免許保有率百%を目指していることを受けてのものである。また福岡県公立学校教員採用試験に特別支援枠ができ、しかも近年その数を大幅に増やしている。これで合格した者は必ず特支に赴任し、一般の学校への異動はない。これは、特別支援教育の知識・技能を持った、専門性の高い教員を特支に配置するためであり、当然の措置のように思えるが、問題点もあると考える。

■特支免許を取得する方法
 現職の教員が特支免許を取得する方法として、ここでは二つの方法を紹介する。一つは、免許法認定講習を受講することである。福岡県・福岡市・北九州市の主催で、夏季休業期間に主に福岡教育大学で実施されており、費用は基本的に無料である。もう一つは、放送大学などの通信制の大学の講座を受講することであり、費用が5万円強かかる。取得までに要する時間は、認定講習では早くて二~三年かかるのに対し、通信制の大学の場合は最短、半年で取得できる。こうして特支の二種免許を取得することができる。

■変更の問題点
 問題点は、柔軟な人事異動ができなくなったことである。特別支援の専門知識・技能を身に付けた者が赴任した方がよいという考えは間違いではない。しかし気軽にチャレンジするという考えも、決して間違いではない。免許がなくて赴任して、特別支援教育にはまる人もいる。そもそも、しっかりした知識・技能を身に付けてからとしていたら、特支への異動を考える人がいなくなってしまう。忙しすぎて、特支免許を取得する時間も、心のゆとりもないからだ。
 本来は、一般の学校と特支の両方を知っていることが理想である。もちろん特支の教員はそれぞれが熱心で、子供達のためならと苦労を厭わず頑張っている。しかしどんな組織にも言えるが、同質のものだけで構成される集団は、柔軟性がなくなってしまう。外からの風は、どんな組織にも必要なものだ。障害のある児童・生徒を指導するに当たって、一般的な児童・生徒のことを知っていることが目安になる。特支しか知らないと、「まあこんなものでいいか。」となってしまう恐れがある。反対に、一般の学校から特支へ異動すると目を見張ること、学ばされることがたくさんある。しかも特支で学んだ知識・技能は、一般の学校へもどった時に間違いなく役立つ。この点からも、今回の変更は問題があると考える。

■特支免許を取得してみて
 私は高校に二十年勤務し、特支免許がなくて知的障害部門の特支へ異動した。深く考えず、「何とかなるだろう」と気軽に異動した。戸惑うことばかりだったが、多くのことを学び価値観も変わり、人として成長できた。そして学校の一員として、いくらかは貢献できているとも思っている。特支免許は、認定講習を受け、三年かかって昨年度末に取得することができた。
 特支免許を取得して考えたのは、この免許が何の役に立つのかということだ。認定講習の内容は興味深く、また関連する本も読んで勉強してきたが、まったく不十分である。児童・生徒のいる現場の方が、はるかに多くのことを学べた。「習うより慣れよ」である。
 特支の現場で最も困っていることや課題は、認定講習ではほとんど扱われない。難しいのは、自閉症・てんかん発作・他傷・自傷・心の弱さ、などへの対応であり、日々悪戦苦闘し、うまく対応できない自分がいる。しかし、そういうことは認定講習では扱われず、本にも書かれていない。

■特別支援学校勤務のすすめ
 問題点はあるが、この人事異動の方向性はしばらく変わらないだろう。したがって多くの先生(特に若い方)に、特支免許を取得し特支への異動を希望していただきたいと考える。各種障害の研修を受けるより、よほど意義がある。再び高校へもどったとしても、一皮むけた立派な教師としてもどれるはずだ。
(文責 金子 達也)

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