福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成30年3月7日

「課外授業への対応に揺らぐなかれ」

■課外授業の問題点

 福岡県の高校の課外授業について議論が起こっている。発端は福岡県議会における民進党・県政県議団による代表質問だ。高校生から「朝課外に出ると十分な睡眠がとれず授業も眠くて集中できない」との声があったらしい。質問では課外で教科書を進めること、出席状況を進学や就職の際の校内推薦の選考基準としていること、参加の希望の有無を保護者に希望をとっていないといった事例があることを指摘し、課外授業への生徒の参加は事実上、強制ではないのかと問う。さらには教員の負担や教育効果の面からも疑問を呈し、「自主性」の尊重を訴える趣旨である。


■県教委の通知

 これを受けて県教委は平成二十九年十一月に通知を出し、留意事項をまとめた。生徒、保護者への周知と参加意志の確認、正課の授業とは区別すること、出席等に関する状況を進路に係る学校推薦及び皆勤賞の表彰等の要件としないこと、保護者の同意の下に費用徴収を行い、他の学校徴収金とは明確に区分すること、終了時に保護者及び主催団体に対し会計報告を行うこと、などを求めている。
 通知の内容は極めて当然のことであり、学校、教員側に認識の不足があったとすれば直ちに改めるべきであることは言うまでもない。

■そもそもの趣旨

 課外授業は地方において塾など外部機関が少なかった時代に、学力向上と生徒の進路実現を目的として始まったものである。教員側の意欲に対し、の要請により、徴収金から時間外の指導に対し手当が支給されるという現在の形となった。当時から労働の観点から、課外反対を唱える教員もおり、ある意味、教育正常化の流れとも軌を一にするものとも考えられる。

■懸念されること

おそらく、教育効果の観点から全員課外のスタイルが出来てきたものと考えられるが、「強制」という言葉で括り、報道などにより、あたかも自主性全てが奪われているといった風潮で覆われると他の教育活動にも影響が及ぶ危険性がある。将来の進路選択がまだできていない生徒に対し、自らの進路を考えながらも一、二年生の間は基礎学力の定着のために全員課外とすることは大いに合理性があるのではないか。生徒の事情に配慮しつつ、強制か主体性かという二項対立的な発想ではなく、一人一人の生徒の成長に何が必要かというそもそもの趣旨に立ち戻るべきだと考える。
 また、働き方改革が議論される中、教育を労働の観点から論じることも危険性を孕む。教員個々の事情は配慮しなければならないが、例えば同教科の担当者の一人が課外を実施しないとした場合に、2クラス分を合同課外授業にせざるを得なかったり、一部の教員に負担が偏る可能性も考えられる。結果的に生徒が不利益を被ったり、教育格差が広がるといった事態は避けなければならないだろう。

■議論に抜け落ちていること

 また今回の議論で抜け落ちた点がある。土曜日にも正課授業を行い、加えて課外も行っている私立高校の実態が問われていないのだ。少子化の中、県立、私立ともに生徒募集は熾烈を極める。私学無償化の議論も待ったなしの状況で、高校全体が問われなければフェアとは言えないだろう。
 加えて福岡県では小中学校の学力向上が課題とされ、高校側は必死にその課題を克服しようとする意識を持つ教員も多い。また、高校入試のために非常に多くの中学生が塾に依存した学習を経てきている点も認識されるべきである。

■課外の最適化を目指すべし

 さて、課外授業を単に授業の延長ととらえ、形骸化している側面があるとすれば見直す絶好の機会である。次期学習指導要領や高大接続改革の観点から、高校教育の理念そのものが問われているのだ。まず求められるのはカリキュラムマネジメントと授業改革であるが、各学校ともに目指すべき理念と生徒像を定め、有効に課外を活用すべきではないか。学校の実態から、選択肢に全員課外があるとすれば排除されるべきではないと考える。説明を果たし、揺らぎのない対応が必要である。