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私たちの主張

Opinion

平成29年11月9日

【教育テーマ論点整理】 「学校における働き方改革」について



 平成29月8月29日、中央教育審議会初等中等教育分科会学校における働き方改革特別部会は「学校における働き方改革に係る緊急提言」を宮川文部科学大臣政務官に提出した。全日教連の見解とともに示す。

緊急提言の目的

 まず、序文において、「教員勤務実態調査から、教職員の長時間勤務の実態は看過できない状況」と指摘し、「学校教育の根幹が揺らぎつつある現実を重く受け止めるべきであり、『学校における働き方改革』を早急に進めていく必要がある」との認識を示している。また、「『今できることは直ちに行う』という認識を教育に携わる全ての関係者が共有するとともに、必ず解決するという強い意識を持って、それぞれの立場から取組を実行し、教職員がその効果を確実に実感するようにするため」と目的を述べている。

3つの提言(概略)

 提言の概略は次の通りである。(抜粋)
提言1 校長及び教育委員会は学校において「勤務時間を意識した働き方を進めること
○適切な手段により管理職も含めた全ての教職員の勤務時間の把握(自己申告方式ではなく、ICTやタイムカード等、勤務時間を客観的に把握・集計するシステムの速やかな構築)
○勤務時間外の留守番電話の設置やメールによる連絡対応をはじめとした体制整備のために支援
○部活動の指導体制の充実に向けた活動時間の設定と、部活動指導員の活用や地域との連携等の推進
○長期休暇期間における学校閉庁日の設定等

提言2 全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進している。
○各教育委員会の所管する各学校に対する時間外勤務の削減に向けた業務改善方針・計画の策定
○統合型校務支援システム導入促進
○国及び地方公共団体等の学校への調査・依頼・指示等の整理・把握とその精選及び合理化・適正化
○地方公共団体における給食費の公会計化の推進と、学校徴収金を教員の業務としないよう改善
○校内の業務の連携・分担等を見直し、事務職員の活用による事務機能強化や業務改善の取組の推進

提言3 国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること○学校・教職員の勤務時間管理及び業務改善の促進
・業務改善を加速するための実証研究やアドバイザー派遣の充実等
○「チームとしての学校」の実現に向けた専門スタッフの配置促進等
・SC、SSWの課題を抱える学校への重点配置を含めた配置促進、教員の事務作業(学習プリント印刷等)等をサポートするスタッフの配置促進、スクールロイヤーの活用促進に向けた体制の構築等
○学校の指導・運営体制の効果的な強化・充実
・小学校における専科教員、中学校における生徒指導担当教員の充実、校長や副校長・教頭等の事務関係業務の軽減に有効な主幹教諭・事務職員などの充実による学校運営体制の強化等

その後の審議状況

その後、特別部会では①教員のみが担える業務、②教員が担う必要があるが、教員以外の者の参画により教員の業務量を軽減できる業務、③他にふさわしい者がいる場合には必ずしも教員が担う必要がない業務、④教員以外の者が担うべき業務、⑤学校以外が担うべき業務の観点から、業務の役割分担・適正化に関する議論が行われているが、割愛する。

全日本教職員連盟の見解

 本連盟も加盟する全日本教職員連盟(全日教連)はこの緊急提言に対し、見解を表明した。概要(要約・抜粋)を示す。

(提言1について)勤務時間の管理は時間外勤務削減への圧力となる恐れがあり、授業準備に係る時間の短縮、教育技術の伝承といった協働を困難とする状況を生み出す。更に「勤務時間外での保護者等問合せの制限」は児童生徒指導の更なる困難化を招くことが予想される。結果、学校教育の質の低下に直結する恐れがある。

(提言2について)学校内部だけの業務改善だけでは限界がある。教育委員会が早期に業務改善方針・計画を策定し、学校現場と一体となって業務の精選を実行していくことが重要である。「統合型校務支援システムの導入」など「今できることは直ちに行う」ことが望まれる。「学校事務職員の活用」は多忙化を招き、業務改善が図られるとは考えにくい。
(提言3について)SC、SSWの配置は専門的な知見を得るためのものであり、業務改善が図られると考えるのは早計。「スクールサポートスタッフ」や「部活動指導員」には一定の評価。本質的な課題の解決には「教員一人当たりの担当授業時数軽減」のための定数改善が必要。

この問題を「労働問題」として矮小化するのではなく、「教育問題」の視点から中教審の議論が進んでいくことを期待する。





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