福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

令和元年9月9日

論点整理「Society5.0における学校教育」

■新時代に対応した高等学校改革
本年五月、教育再生実行会議が「技術の進展に応じた教育の革新、新時代に対応した高等学校改革について」という第十一次提言を発表した。提言では、学校のICT環境は脆弱で危機的状況にあること、ICTは教育の「マストアイテム」であるとの認識を関係者が共有し、整備の加速が急務であることを述べている。その翌月、福岡県教育委員会からも新たな発表がなされた。
■ICT環境整備に向けて
 本年六月、福岡県教育委員会は、「次期学習指導要領で求められる主体的・対話的で深い学びによる学習方法をICT環境の整備・活用により推進する」として、次のような重点施策の計画を発表した。
①三カ年で、全県立学校の普通教室及び職員室に無線LANを配備。
②四カ年で、約百校の県立学校の普通教室に固定型プロジェクタを配備。
③今年度中に全県立学校にグループ学習用として各校に十五台のタブレット型パソコンを配備(特別支援学校の全普通教室に一台配備)。
ちなみに佐賀県の県立高校では、平成二十六年度入学生から一人一台の情報端末を活用して授業が展開されている。福岡県もICT環境整備に向けて、いよいよ動き出した。
■Society5.0における学校
Society5.0(超スマート社会)では「学びが変わる」と言われている。
①同一学年集団→異年齢、異学年での協働学習へ。
②学校での学習→大学、教育機関、企業、施設等で。
③一斉一律授業→個人の進度、能力、関心に応じて。
これまでの学校教育では「ひとしく教育を受ける権利」に沿った一斉一律型の指導が主流だったが、ICT環境が整備されることによって「公正に個別最適化された学び」が実現可能となる。
■公正に個別最適化された学び
文部科学省は令和七年度までに、「児童生徒一人につき一台、教育用のパソコンやタブレット型端末が利用できる環境を整える」という目標を示した。「教育ビッグデータ」を整備し、人工知能で分析を行い、子供の興味関心や得意、不得意などに応じてドリルの問題を提供することも可能になるという。子供たちは個人の進度、能力、関心に応じた主体的な学びが可能になり、学習効率の向上も期待できる。授業での教師の役割も「指導」から「支援」の要素が増すと考えられる。つまり、教師に求められることも必然的に変わる。
■Society5.0における教育
「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、新時代の教師は、どんな授業を展開すれば良いだろうか。授業の最初に「めあて」や「ねらい」の説明は必須であろうが、その後、児童生徒はタブレット型端末を活用しながら、個人の進度に応じて主体的に学習を進める。教師は個別に対応しながら、必要に応じて全体への解説を入れたりもするだろう。そして、教師が決して忘れてはならないのが「対話的」な場面の設定である。タブレット型端末を活用しながら「ある問題をグループで取り組ませる」「あるテーマについて話し合いの時間を持つ」等の手立ても考えられる。また異学年での協働学習を取り入れれば、上級生が下級生に教えるという場面も出てくる。上級生にとって「教える」ことは「深い学び」にも繋がる。
■Society5.0における学び
先に述べた教育再生実行会議の第十一次提言では、高等学校で生徒に次のような力を身に付けさせなければならないとしている。
①文章や情報を正確に読み解き、対話する力
②科学的に思考・吟味し活用する力
③価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探究力等
さらに、生徒が高い志を持って成長し、より良い社会の担い手となるよう、生徒の自己肯定感を育むことも求められていると述べている。
確実に訪れるSociety5.0に向けて、教師自身も新たな学びを始めなければならない。どれほどICT環境が整ったとしても「教育は人なり」と自信を持って応えられるよう、今後いっそう、教師自身にも主体的な学びが求められる。