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私たちの主張

Opinion

平成31年4月8日

「県立学校における勤務時間管理システム導入の効果」

■勤務時間管理システム導入
 昨年三月に福岡県教育委員会(県教委)から出された「教職員の働き方改革取組指針」で予告された通り、本年一月から県立学校で、全ての常勤の教職員を対象に、ICカードによる勤務時間管理がスタートした。教職員の勤務時間の適正な把握を行うことで、業務改善の諸施策、教職員の健康管理などをより効果的に実行することを、県教委ではねらいとしている。しかし、導入開始から二ヶ月、学校現場からは不安の声が上がっている。
■適切な業務マネジメント
ICカードによる勤務時間管理システム導入前の昨年十二月、県教委は、各学校の管理職に対して次のように要請している。「管理職は時間外労働が一定の時間を超える教職員に対して、適切な過重労働対策としての面接指導を勧奨するなど、教職員の健康管理を推進すること」。さらに次の二点の報告を課している。「①一月当たりの所属教職員の平均超過勤務時間」「②一月当たりの超過勤務時間が八十時間を超える教職員」。二月に入り、②に該当する教職員が管理職の面談を受け、働き方の見直しを促されている。さらに「超過勤務時間等報告書」に該当者の氏名が記され、県教委に報告されることになるが、これに対しては、たとえば講師の間では、超過勤務が採用に響くのではないか、という不安も広がりつつある。本来、業務マネジメントとは、業務の精選や分担の再検討など、働きがいの確保に向けて行われるべきものではないか。
■教職員の意識改革
 「働き方改革」を論ずる場面では、「意識改革」「日常業務の見直し」とたびたび言われる。確かに一般企業であれば、時間外勤務には残業手当が発生するので、企業の負担にならぬよう、できるだけ勤務時間内に業務を終えなければならないという意識が働く。一方、教職員には「教職調整額」が一律に支給されるので、時間内に業務を終えようとする意識は薄い。また、授業準備や生徒指導は、教師によって成果に納得できるラインも異なる。このことは業務時間の個人間の差につながりやすい。今後「ワークライフバランス」を軸に教師の働き方を見直すとすれば、限られた時間で、いかに学習指導や生徒指導をバランスよく充実させるか、その努力が求められる。しかし、現下の教師が抱える業務量を考えると、個々人がバラバラに取り組んでも、とうてい実現不可能な目標に思われる。やはり教師がクラスの「一国一城の主」的な意識を脱却し、チームとしての協働性を高めつつ、業務の再配分を図らねばならない。根本的なことだが、協調性を高めるためにまず職員室に必要なのは、教師同士の、心のかよった会話を取り戻すことではないか。どんな教育を目指すのか、克服すべき課題は何であるか、会話の中から共通の「目的」が確認され、よりよい業務の分担も見出されていくのではないか。一方で、働き方を見直すためには、自分自身がどのような時間の過ごし方をしているのか、個々人が客観的に自己を眺めなければならない。その俯瞰の道具として、教師各自が勤務時間管理システムを有効に活用する視点も、今後は必要である。
■業務の棚卸しを
 「業務の見直し」はそれまでの取組を否定することにもなりかねないので、教師にとっては勇気のいる作業である。しかし、時代が変化しつつある今、日常業務が本来持つ「目的」を再確認する作業は必要であろう。東京都のある中学校は、定期考査を無くして話題となった。その決断に到る過程において、全職員で現在の課題を分析し、各業務の目的を再確認した結果、定期考査を削るという結論に到った。「業務の棚卸し」を行い、生徒の実態に叶った単元ごとの確認テストの実施へと移行したのである。
■日本型教育の良さ
 「日本型教育」はOECDにおいても高く評価されている。学校では教師が教科の学習だけでなく、道徳やしつけを教える。さらに部活動指導も行う。教育活動を通して知育・徳育・体育の全てを育む、いわゆる「全人教育」を日本の教師は目指してきた。その理念は我が国の強みとして維持すべきではないか。日本型教育の良さを残しつつ、持続可能な形を構築していくためには、「チーム学校」を目指した教職員の意識改革が求められている。

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