福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成25年5月1日

「学校週6日制」を考える

完全週5日制に至るまでの経緯

学校週5日制は、平成4年度から段階的に実施され、平成14年度に完全週5日制が導入された。平成8年7月に出された中央教育審議会第1次答申には、今後における教育の在り方と学校週5日制の目指すものは「子供たちや社会全体にゆとりを確保する中で、学校・家庭・地域社会が相互に連携しつつ、子供たちに生きる力をはぐくむ」こととある。
しかし、昭和62年12月に出された教育課程審議会答申には、「学校週5日制の問題は、社会情勢の変化との関連を考慮しつつ検討すべき課題である。社会情勢の変化の一つとして、社会一般における週休2日制が普及、拡大しつつあり、この傾向は、今後更に進むことが予想される。」とあり、学校週5日制は労働時間の短縮、週休2日制の普及拡大の結果とも言える。

週6日制に向けた動き

学校週5日制が教育現場に定着してきた中、自民党の政権公約に掲げられた「土曜授業の実現」が現実味を帯びてきている。3月に行われた下村博文文部科学大臣の定例記者会見の中で、義家弘介政務官の下、省内で土曜授業の在り方検討プロジェクトチームが立ち上げられたことが発表された。早ければ夏にも省令を改正し、来春から自治体の判断で実施できるようにするとのことである。学校教育法施行規則は現在、土曜日を休業日と定めており、例外的に、特別の必要がある場合にだけ授業を認めているが、改正後は土曜授業を「特別の必要がある場合」に限定させず、土曜を含めた弾力的な時間割編成を可能にする案が議論された。
また、福岡県内の公立小・中学校では、外部人材の協力を得て実施する場合や、保護者や地域に公開する場合等においては、教育課程に位置づけられた授業を行うことができる旨が3月に県教委より通達されており、すでに週6日制にむけた取り組みが行われている。

学習指導要領との関連

義務制ではすでに全面実施され、高校では今年度から年次進行で実施となる新学習指導要領では、小・中学校では国語・算数(数学)・理科等の授業数が10%程度増加し、週あたりの授業時数は1~2時間増加している。それに伴い、教科書の総ページ数も理数科目を中心に2割から3割程度増加しており、学習内容の増加が顕著に見られる。高等学校においても、理数科目を中心に学習内容の増加が見られ、授業時間数の確保は急務の課題であり、義務制同様に授業時数の増加を行う必要制が生じている。平成24年度においては、福岡県内の特別支援を除く県立学校94校中7校が週当たり33単位を超えており、32単位の高校を含めると44校となる。週5日制を継続するのであれば、今後も7限目授業実施の増加が見込まれる。

連盟員の意識調査

このような現状を踏まえ、5月1日、2日に各支部で行われた支部役員会において、週6日制に関するアンケートを実施した。その結果、週6日制に賛成が51.4%、反対が13.5%、どちらともいえないが35.1%であった。ただし、賛成と答えた連盟員は、現行の週5日制に移行する際に、6日分の業務が5日間に凝縮されたことによる多忙化(7限目授業等)が解消されることを前提としている。
賛成と答えた連盟員の中に、土曜講座(土曜セミナー)に関する意見が多く見られた。導入状況や開講科目、参加者等は学校の実態に応じて異なるものの、生徒の学力補充のため、月2回程度の土曜講座が実施されている。一見すると以前の隔週六日制と変わらないが、正規の授業ではないため、授業の内容は扱えないことや、安易な欠席が増えること、担当教員に業務が偏ること等、決定的な違いがある。土曜日に正規の授業を実施すれば、これらの問題が解消される上に、授業時数確保につながり、生徒の学習習慣形成に大いに役立ち、教育の機会均等にもつながる。
しかし、反対と答えた連盟員の中には、この土曜講座も含め、学校行事や公式戦等すでに土曜日の活用が定着しており、それを以前の週6日の形に戻すのは困難であるという意見や、平日の業務を土日に行う教員が多数いる中での週6日制の導入は、ますます多忙化に拍車をかけることにつながるという意見がある。
生徒にとっては、前述したように、学校で学ぶ日数が増え、基本的生活習慣や学習習慣の確立につながり、保護者にとっては学校に子供を預けている安心感が生まれる。しかし、家族の交流の時間は短くなるという弊害がある。

今後の課題

今回のアンケートは、一部の連盟員に対する簡易なものであったため、全体の声を反映できてはいないものの、週6日制の意義を考えるにあたり、貴重な資料となった。現場からの声を反映し、新学習指導要領と照らし合わせながら、学力向上、部活動、特別活動等「教育的」視点と教師側の「勤務状況の改善」という両方の視点から、在り方を考える必要がある。

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