福岡教育連盟は教育の正常化を目指し、日々教育活動に励む教職員の集まりです。

私たちの主張

Opinion

平成30年6月8日

「迷ったら、厳しい道を」

■朝課外「強制」根強く?
 4月18日、西日本新聞の朝刊一面に「福岡県立高 朝課外『強制』根強く『自由参加』は有名無実?」という見出しが踊った。この記事に不快感を覚える福岡県立高校の教師は少なくない。
 従来、全員を対象とする課外を実施してきた県立高校は、昨年後半から、進路部を中心に、どんな形態の課外授業が自校の生徒にとって最善かを考えてきた。3学期から「選択制課外」を導入した県立高校もあれば、今年度も、全員に課外授業の受講を薦めて、全員の進路実現に繋げる方向性を打ち出した県立高校もある。それぞれの学校の実態に合わせて対応したが、多くの県立高校で「課外を受講しない」ことを選択した生徒がいる。つまり、学校現場で「強制」はしていない。
■本当に「強制」されたのか
 この西日本新聞社の「特命取材班」には「『参加を強制された』という生徒の声が相次いで寄せられた。」とある。実際にどのくらい寄せられたのか、どのような取材をされたのか、質問をしたいものである。また「教員は『生徒のため』」という見出しも同記事内にあるが、生徒の成長を願わない教員はいない。生徒たちのプラスになると思うからこそ、朝早くから学校に出て、生徒たちを出迎えるのである。「本校は、保護者の協力のもと、朝早めに登校して、全員で勉強する。これを本校の特色化の一つとする」という学校があってはいけないだろうか。
■「県立高校の誇り」
 福岡県では、県立高校への進学を第一志望とする中学生が多い。これは、「勉強も部活動も頑張れる場」という認識が高く、県立高校のいわゆる「全人教育」が評価されてきたからである。しかし、近年、定員割れをする県立高校が増加しているのも事実である。
私立高校は、学習内容の減少を防ぐため、土曜日にも授業を実施し、コースによっては、朝課外に放課後2時間の課外授業を実施している高校もある。公教育の場である県立高校が、地域や保護者から認められなくなってはならない。県立高校の教師は、県民からの期待に応えるべく努力を続けている。今回の記事は、そんな教師の誇りを踏みにじりかねないものではないだろうか。
■「朝課外」を受講しない生徒たちは
 四月時点の本連盟の調査では、上級学年ほど「課外を受講しない」ことを選択した生徒が多いという傾向が明らかになった。その生徒たちは自分で学習を進めるのか、あるいは塾に行くのか、現時点では分からないが、その選択がその生徒たちのプラスになるのか、不安を感じずにいられない。朝課外の受講を承知のうえで入学したはずであり、「課外を受講しない」という選択が、生徒、保護者でじっくりと考えて出した積極的な選択であること、決して逃げの選択肢でないことを願いたい。また、各学校は「魅力ある課外授業」を展開する努力も忘れてはならない。正課授業はもちろんだが、課外授業を受講することで、より効果的に学力を伸長できることを示せば、生徒、保護者ともに考えを変えてくれるのではないだろうか。
■迷ったら、厳しい道を
今回の朝課外を受講するか、しないか、迷った生徒も多かっただろうと思う。「二つのことで、選択を迫られたとき、迷ったら、その時の自分にとって厳しい方を選択しなさい。」こんな言葉を聞いたことはないだろうか。人生において、選択を迫られることは非常に多い。そんな時に迷ったら、自分にとってつらいだろうと思われる方を選ぶ。そちらが正解だという教えである。必ずしもそうではないかもしれない。ただ楽な方を選んだ場合と厳しい方を選んだ場合では、上手くいかなかった時の後悔の度合いはどうだろうか。「自分にとって楽な方を選ぶのではなかった」と自信を失う可能性もある。人は誰もが、楽な方に流れがちである。それが正しいか正しくないかは、その後の結果が出なければ分からない。たとえ失敗しても、自分に厳しい選択をしたのであれば、納得もしやすく、傷つくことも少なかろうという教えではないだろうか。
「朝課外」は決して強制ではない。ただ、今の自分にとって「つらい」からやめるのは、厳しい方を選ぶことにはならない。