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Opinion

平成29年11月9日

【教育テーマ論点整理】「高校生のための学びの基礎診断」実施方針について



 平成29年7月12日に開かれた文部科学省の「高校生のための学びの基礎診断」検討・ワーキンググループ第一回会合において実施方針案が示され、翌13日に「実施方針」として策定された。高大接続システム改革会議最終報告(平成28年3月)(以下「最終報告」)、高等学校基礎学力テスト(仮称)検討・準備グループの論点整理(平成29年3月)(以下「論点整理」)を踏まえた論点と「実施方針」の概要を述べる。

目的と名称について

 「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入の考え方として、「最終報告」では、高校生の基礎学力の不足、学習意欲の低下に加え、大学入学者の選抜機能の低下等を背景に挙げ、多様化した高等学校の質の充実に向けた施策を推進する必要性を述べている。さらに目的を「義務教育段階の学習内容を含めた高校生に求められる基礎学力の確実な習得」と「それによる高校生の学習意欲の喚起」としており、「実施方針」にも引き継がれている。
 名称については「論点整理」において、受験者に目的が端的に伝わるものとする必要があること、趣旨を早期に正しく理解してもらうために、「テスト」に替えて「診断」を用いた呼称で広報を進めてはどうか、といった検討、提案がなされ、この名称が、「実施方針」で確定された。

民間の試験等を認定する仕組みを創設

 「最終報告」の段階で民間事業者の活用については、「公的な性質を踏まえつつも、可能な業務は積極的に民間事業者の知見を活用する」としており、特に英語については四技能を重視する観点から民間の資格・検定試験の知見を積極的に活用する考えを示している。
 「論点整理」においては実施体制として、大学入試センターで直接実施とする(a)案と公的な統括・関与の下に、民間事業者が問題を作成し実施とする(b)案が示されていたが、実施方針では「高等学校における多様な学習成果を測定するツールの一つとして活用できるよう、文部科学省において一定の要件を示し、それに則して民間の試験等を認定する仕組みを創設する」としており、(b)案が採用された形となった。なお、具体的な手続きの概略として、民間事業者からの申請に基づき、審査、認定、点検、取消等のイメージを示している。

実施方法・出題内容・回答方式、結果表示・提供について

 「実施要項」では、学校での実施等、学校の実情に応じて利活用できる方法で、学校にとって過度に負担がかからず、安定的・継続的に実施できる実施方法であること、学習指導要領への対応等、制度の趣旨、目的に合致する出題であること、さらに受検者の学習成果や課題について確認できる結果提供であること、などを記述している。基準や審査方法の検討に際して、民間の創意工夫を生かしつつ、共通的に確保すべき基準とのバランスをいかにとるか、などの論点も書かれており、今後の議論に注目が必要だ。

引き続き検討すべき課題

 設計方針に基づき、「最終報告」や「論点整理」を踏まえ策定するものとして、対象教科・科目や問題内容、解答方式、結果提供(表示)、CBTの活用、実施回数、時期・場所、結果活用の在り方、受験料等の実施内容に関する取扱いが挙げられている。さらに「実施要項」には「最終報告」及び「論点整理」において示された実施内容の概略が記されているので、いくつか抜粋しておく。
○国数英で共通必履修科目を上限として開始。義務教育段階の内容を一部含める。
○難易度の異なる複数レベルの問題のセット。
○記述式の導入など、多様な解答方式を採用。英語は4技能の測定を前提に検討。
○段階表示で結果を提供。指導の工夫・改善に資する情報提供。
○当面CBTは必須としない。検討・研究を継続。
○回数・時期、対象学年は学校が選択し、会場は学校実施を基本。
○受検料はできるだけ低廉な価格で等。
 なお、平成28年度に高等学校基礎学力テストに関して、実践研究校を対象に試行的に調査が実施されているが、その結果、テストの難易度については2段階準備されていたが、更に多段階が必要との意見やCBTについては手軽な複数回受検ができることに期待を寄せる一方、PC環境の整備を課題に挙げる学校もあった。受託事業者からは、民間事業者が問題を作成し、実施する体制は十分考え得るとの意見もあったようだ。

準備スケジュール

 試行調査は本年度も引き続き行われ、その結果等も踏まえ、本年度中に認定の基準等を策定し、平成30年度中に認定制度を開始することを目指すとスケジュールについて述べている。
結果の副次的利用(入試や就職への活用)についても検討課題としており、実施段階までに検討すべき課題がまだ多く残っている。

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